大阪高等裁判所 昭和30年(う)2292号 判決
所論は原審の科刑が重過ぎるというのであるところ、その点を検討するに先だち、原判決には法令適用の点に誤があると認められるから、その点を論ずる。すなわち原判決には法令の適用として、「被告人の判示所為中第一の(一)の点は覚せい剤取締法第四十一条第一項第四号、第十七条第三項に、第一の(二)の点は同法第四十一条第四項第一項第四号第三項第十七条第三項に、第二の点は同法第四十一条第一項第五号第十九条に、第三の点は同法第四十一条第一項第二号第十四条第一項にそれぞれ該当する」と記載せられているが、昭和二十六年六月に制定せられた覚せい剤取締法は昭和二十九年六月と昭和三十年八月とに改正せられており、昭和二十九年に改正せられるまでの同法第四十一条の法定刑は三年以下の懲役又は五万円以下の罰金とあり、右改正後はその法定刑が五年以下の懲役又は十万円以下の罰金となつていて、その間刑の変更があるわけである。そして原判示第一の(一)の所為(これを(イ)とする)は、昭和二十七年十一月十七日頃の犯罪、原判示第一の(二)、第二、第三の所為(これらを(ロ)とする)は、昭和三十年一月三日頃から同年七月十七日までの間の犯罪であつて、右(イ)については昭和二十九年に改正せられた以前の同法を、(ロ)については昭和三十年に改正せられた以前の同法を各適用すべきであるところ、原判決には単に覚せい剤取締法と記載してあつて、以上のように順次改正せられたいづれの法律を適用したか明確でなく、ただ(ロ)については原判示第一の(二)の所為に対し、同法第四十一条第四項を適用してある点からみて、――昭和三十年に改正せられた右法条には、第四項がなく、それに該当する規定は第四十一条の二となつている――昭和二十九年に改正せられ、昭和三十年に改正せられるまでの同法を適用したものと認めることができるが、(イ)については前述のとおりその間法定刑の変更があつたのに拘らず、果してどの法律を適用したか全く明かでない。従つてそれは擬律上の誤謬と認めるのほかはない。けれども、原判決は本件四罪を併合罪と認め、原判示第一の(二)の罪について定められた昭和二十九年に改正せられ、昭和三十年に改正せられるまでの同法第四十一条第四項の刑に法定の加重をした刑期範囲内で処断しているのであるから、たとい、(イ)について右のような誤があるとしても結局その誤は判決に影響を及ぼすことが明かであるとは認められない。そこで、量刑の点について考えるに、記録を精査して、本件犯罪の性質、その経緯、並に被告人の前歴、環境その他諸般の情状から判断すると、たとい、所論を十分斟酌しても、原審の科刑は、これを不相当であるとは認めるに至らない。
(裁判長判事 斎藤朔郎 判事 網田覚一 判事 小泉敏次)